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かんてい通信

かんてい通信 第007号 題名:原子力損害賠償と鑑定評価

 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は去る8月5日に「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」を公表し、賠償すべき損害と認められる一定の範囲の損害類型を示しました。
 その中に「財物価値の喪失又は減少等」という項目があり、この財物には土地建物などの不動産も含まれることが明記されております。避難指示等の区域内の財物が、避難による管理不能、放射性物質による曝露、取引者の心理的・主観的な要素により、価値が喪失又は減少した場合の価値の喪失・減少分と追加的費用(廃棄費用、修理費用、除染費用等)が賠償の対象になるとされています。また、この追加的費用は原則として財物の客観的価値の範囲内に限定されますが、文化財、農地等の代替性のない財物については例外的に合理的な範囲内で当該財物の客観的価値を超える金額も賠償の対象となることが指針に示され、宅地や住宅も個別の事情によっては代替性のない財物に該当しうることがQ&A集問63の答に示されています。
 さらに、中間指針に記述のない避難指示等区域外の不動産の価値の喪失又は減少や除染費用等についても、個別の事情に応じて賠償対象と認められることがあり得ることがQ&A集問68の答に示されております。
 上記の不動産の価値の減少は事故直前の不動産の価額から事故後の不動産の価額を控除することによって求めることができますが、不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することができるのは、我が国の法律により、一定の場合を除き、不動産鑑定士に限られています。
 ここで不動産鑑定評価の手法の一つである収益還元法の考え方を応用して警戒区域内の不動産の価値の減少分を一つの仮定に基づき試算してみることとします。
 仮に年間純収益(収益−費用)が1、還元利回りが5%の不動産の価格を収益還元法の一つの方法(直接還元法)によって試算すると1÷0.05=20となります。逆に価格が20で還元利回りが5%の不動産の年間純収益は1という関係が成り立ちます。事故直前に価格が20の不動産がその後1年間使用不能(発生費用はゼロとする)と仮定したときの価格は20−1=19と試算されます。
 例えば福島第一原子力発電所から半径20q圏内の警戒区域内の土地の経済価値の減少分について考えてみましょう。
 この区域は原則立入禁止ですので、立入禁止期間中はその区域内の土地を利用することができません。利用できない期間の収益はゼロで、固定資産税等の費用の発生が全くないと仮定しても、純収益はゼロですから、このことから年間の価値の減少分を試算してみます。
 公益社団法人日本経済研究センターが去る5月31日の第17回原子力委員会に提出した資料によれば、該当市町村の公示地価から推計した20q圏内の土地の買い上げ費用として4.3兆円が示されています。この4.3兆円を事故前の土地の価額と仮定し、さらに還元利回りを一律に5%と仮定すると、1年間の土地の価値の減少分は4.3兆円×5%=2,150億円と算出されます。
 上記は警戒区域内の土地のみの価値の減少分ですが、年間積算線量20ミリシーベルトに達するおそれある区域や、それ以下でも健康被害の生ずるおそれのある地域を含めると膨大な金額にのぼると推定されます。

2011.9.16(執筆者:不動産鑑定士 江沢正彦)  図出典 等値線作成:早川由紀夫(群馬大学)
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