3月22日に国土交通省より平成24年公示地価が発表されました。
結果は全国平均で、住宅地△2.3%、商業地△3.1%、工業地△3.2%となっています。
各種メディアには以下のような事例が取り上げられていました。
@ 東京スカイツリー周辺の押上駅に近い商業地が前年比3.0%の上昇、旧業平橋駅約300m
の商業地が前年比1.3%上昇となった。
A 千葉県の木更津市、君津市、袖ヶ浦市では住宅地で複数の上昇地点が見られた。
背景には、木更津、袖ヶ浦市では人口が増加しているわりには良好な住宅地の供給が少な
いこと、利用料金を下げたアクアライン効果、今年4月13日にグランドオープンする三井
不動産の「アウトレットパーク木更津」など複数の要因が挙げられている。
などがありました。ピックアップしたものはいずれも地価の上昇についてものですが、全ポイント(26,000地点)のうち上昇したものは546ポイントで全体の2.1%なので上がった所は局地的だったと言えるのではないかと思います。
これらの事例はスカイツリーの開業やアウトレットパークの開業など、開発により人の流れが変わることが見込まれることにより先行して地価が上昇したと分析されています。
公示地価の全国平均はバブル経済崩壊後平成3年から18年まで15年間下落し続け19、20年はわずかに上昇したものの21年から24年までは再び4年間連続で下落しています。
19、20年の上昇は3大都市圏の突出した上昇が全国平均を引き上げたものであり、その間も地方平均は下落し続けていました。
これは主に欧米諸国の投資資金が日本のREIT市場の整備により流入し、その結果、地価を押し上げたと考えられます。したがってファンドに組み込みやすい3大都市圏の中心部の不動産に資金が集中しました。
しかし、平成20年にリーマンショックが起きると資金の流入が止まり、また地価は下落し始めました。こうしてみると19、20年の上昇も海外の要因、特に金融の影響が大きく、これがなければ下落が続いていた可能性が高いように私は思います。
国内は人口の減少、経済の構造的な改革ができない状態が続いており、この状態が続く限り地価も基本的には下落していくものと予想されます。
しかしながら、前述した二つの事例は平成19、20年の上昇のように純粋な投資資金が流れ込んで地価を押し上げたのではなく開発による実需の創出が見込めることにより地価が上昇した事例です。
これは金融相場のように資金が抜けたらすぐに潰れてしまう性質のものとは違います。 今後は全体として下落しながらも今回の事例のように人を呼び込むことができる地域については底堅く地価は推移して行くものと思います。
2012.4(執筆者:不動産鑑定士 井上 尚)
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