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かんてい通信

かんてい通信 第027号 題名:インフレターゲット2%実現後の地価動向

 世評では実現の可能性は高くないとされておりますが、日銀による「異次元の」金融緩和策の目玉である「前年比2%の消費者物価上昇」(消費税増税の影響を除く)が実現した場合、地価はどうなるかについて考えてみたいと思います。
 政府にとり物価上昇は過去の債務の軽減(名目的には発行済国債残高、利息が一定であるのに対して将来の税収増加がほぼ確実であるため)に直結しますので、約800兆円(国債発行残高)に膨らんだ借金に対する最終的な解決策として、本気で取り組むと思われるからです。
 前年比2%の物価上昇とは、たとえば1年前は月額100,000円で生活できたものが、いまは月額102,000円ないと同じ生活が維持できないということです。月々2,000円ですから、1年間だけであれば、影響は少ないでしょう。ところが、これが5年間継続すると110,400円となり、10年間では121,900円となって、影響は甚大です。
 物価上昇時は現金通貨の価値が時の経過とともに目減りしますので、通常の人は利子率が物価上昇率を上回る金融資産でないと購入しないはずです。また、物価上昇率のさらなる上昇リスクを考慮に入れて、償還期間が長めの債券にはより高い利回りを求めるでしょう。
 現在は物価上昇率がほぼゼロで長期金利(10年物国債利回り)は約1%ですから、物価上昇率が2%のときの長期金利は3%以上となることが予想されます。
 住宅ローンの金利なども上昇しますので、支払総額を変えないためには、価格のより安い住宅でないと購入できないことになります。例えば1,000万円を年利2%の30年間固定金利、元利均等返済で借り入れた場合(フラット35等)の毎月の返済額が36,961円であるのに対して、2%上昇後の年利4%では47,741円と約29%増加します。毎月の返済額を同額に抑えるためには借入額を約774万円に減らさないといけません。
 現在の金利水準が非常に低いため、借入額が大きく、返済期間の長い住宅という商品の購入に対しては影響が大きいということができます。
 所得の上昇が物価上昇率と同率にとどまるならば、住宅の販売価格は相当程度下げないと需要の急減に見舞われるでしょうから、住宅地の地価は一時的に下落することが予想されます。
 また、賃貸用不動産等の収益物件の価格は
 年間純収益(総収益−総費用) ÷還元利回り(キャップレート)
で求められる収益価格に左右されますが、長期金利の上昇は還元利回りの上昇に直結しますので、家賃が物価上昇率と同程度の上昇にとどまるならば価格は下落することになります。
 上記はアパートや賃貸マンション等、家賃収入を個人の所得に依存する住宅系の収益不動産にはそのままあてはまると思います。
 また、賃貸用のオフィスビル、店舗、物流施設等、家賃収入を企業収益に依存する不動産に関しては、一般的にはキャップレートの上昇を通じて価格の下押し圧力を受けますが、需給動向により賃料が大きく左右されるため、景気拡大により空室率が一定以下になり、賃料が上昇すれば、一部の優良物件については価格の上昇も見込めるでしょう。
 さらに、ホテルやテーマパーク等のレジャー施設については、景気拡大が売上高の増加、稼働率の向上に直結するため、底堅いかもしれません。
 通常は物価上昇と景気拡大は同時進行的であると理解されておりますので、以上の議論は物価上昇、金利上昇、景気拡大が同時に起こることを前提としていますが、物価上昇と金利上昇は同時に起こる可能性が高いものの、景気拡大は必ずしもそうではありませんので注意が必要です。

2013.05.29(執筆者:不動産鑑定士 江沢正彦)

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