安部総理は10月15日の「規制改革会議」で、海外観光客の受け入れ環境づくりの一環として、「民泊サ−ビスの規制を改革していく」との考えを示しました。
この席で総理は、海外からの観光客の増加を例にあげ「喫緊の課題は宿泊施設をどう確保するかにある。それには『民泊サ−ビス』の規制を改革していく必要がある。
国家戦略特区の先行事例をふまえ、特区諮問会議としっかり連携しながら突破口を開いていただきたい」と要請しました。
そもそも、「民泊」とは、個人が所有する住宅の全部または一部を、短期宿泊用に貸し出す行為を指します(住宅新報2015.10.13より,以下「同紙」という)。
同紙によると、日本でのいわば「仕掛け人」は、「民泊」のマッチングサイトを運営するAirbnb(エア-ビ-アンドビ-、通称エアビ-)で、2008年に米国で創業し、現在までに191カ国3万4000以上の都市で展開し、累計宿泊者数は5000万人を超えるようです。
同社の日本法人は2014年5月に設立され、日本国内では本年9月現在で約16,000物件が登録済みです。
仕組みは、まず宿泊希望者がサイト上で登録物件に予約を入れ、料金をクレジットカ-ド等でエアビ−に支払い、貸主が予約を承認し宿泊者がチェックインするとエアビ−が貸主に料金を支払うというものです。
このときエアビ−は貸主から料金の3%、宿泊者からは同6〜12%を手数料として受領します。
素朴な疑問ですが、そもそも「民宿」と「民泊」はどう違うの?という問いに対しては、「旅館業法」にふれるかどうかということが答えのようです。
つまり、宿泊させるという行為を営業として継続的に行うのではなく、あくまで個人間のやりとりをエアビ−のような仲介役に助けてもらって行うのが「民泊」なんだそうで、エアビ−の場合は、物件の損傷等のトラブル時は貸主に対する一定の保証も行っているようです。
2015年の訪日外国人旅行者は約2000万人に達する勢いで、「観光立国」を指向する日本としては、「民泊」は宿泊先の新たな選択肢が増えること、さらに、「空室」や「空き家」問題の対策としても注目されています。
しかし同紙によると、大規模なマンションで共用施設として設置されている宿泊可能な「ゲストル−ム」が物件登録されていたケ−スがあったり、管理会社から「転貸禁止」であることを告げられて物件登録が中止になったケ−スもあったそうです。
また、いろいろな国からの宿泊客を迎えることから、慣習の違いによる「騒音」や「マナ−」に対する周辺住民からのクレ−ムが起きる場合があるなど、今後早急に一定のル−ル化等が待たれる問題点もあります
いすれにしても「民泊」に関しては、法的な位置付けがあいまいであり、トラブルも表面化してきていることから、こうしたデメリットを克服するとともに、メリットとしての「民泊」の良い点を健全なかたちで伸ばしていくことが期待されます。
2015.10.27(不動産鑑定士 木下幸生)
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